
ほんとうはすべて知っていた。
心の底流(undercurrent)が導く結末を。
夫が失踪し、家業の銭湯も手につかず、途方に暮れる女。
やがて銭湯を再開した女を、目立たず語らずひっそりと支える男。
穏やかな日々の底で悲劇と喜劇が交差し、出会って離れる人間の、充実感と喪失感が深く流れる。
映画一本よりなお深い、至福の漫画体験を約束します。
「今、最も読まれるべき漫画はこれだ!
すでに四季賞受賞作で確信していたその物語性と演出力に驚く。
豊田徹也は心の底流に潜む、なにかの正体を求めるように静かに語る。
」――(谷口ジロー)


コメント
アンダーカレント アフタヌーンKCDX
雑誌を見てもすぐに読み飛ばしてしまう。
年のせいだと思っていたが、この本は珍しく1コマも読み飛ばさずに最後まで一気に読んだ。
一見地味に見える絵やストーリーなのに、実はかなり考え込まれて作られているのだろうか。
でもサラっと読める。
そして読みたい時に、すぐに読みたい所へ戻って読める漫画の特性を生かした話になっている。
最後まで読み終わって、また最初から読んだ。
アンダーカレント アフタヌーンKCDX
上手くまとまってます。
夫が蒸発してしまった主人公が銭湯経営を再開することから始まる話。
アンダーカレント アフタヌーンKCDX
読むたびに、人の心の複雑さに思うことが増える。
そして何より豊田さんの絵が好き。
アンダーカレント アフタヌーンKCDX
初期の吉田秋生の絵によく似ていると思った。
微妙な表情の描き方がものすごく上手く、美しいのだけれど、それでも、なんとなく全体としてシンと冷えた印象を与えるのは、主人公の目に生気がないからだろうと思う。
元気に笑っていても、心を映したその目には気が宿っていない。
この「アンダーカレント」というタイトルは絶妙なネーミングだ。
表面上は何事もなく平穏と暮らしているように思える人々の中にも、その一つ下の層で何が流れているのかは、誰にもわからない。
それは目に見えないものであるだけに、当人がひたすらに隠し通せたとすれば、そこにどれほど大きな暗渠が巣食っていたとしても、他の誰にも気付かれないままやり過ごすことは出来る。
主人公の内部に空洞があるにもかかわらず、この物語が救われるのは、その周りにいるサブキャラクターの明るさのせいだ。
その影響を受けて、主人公の表情も段々と変化を見せていく。
とても良い後味を残す作品だった。
彼がどういう人間だったか正直いってよくわからなくなってきてるんです。
彼はいろんなこと私に話してくれましたよ。
でも本当に大事なことは話してくれなかったのかもしれない・・。
今思い出すと、時々、彼は私に何か重要なことを伝えたがってたように思うんです。
ちょっとした表情とか間とか・・沈黙とかそういったものを私も感じてたと思います。
(p.202)
アンダーカレント アフタヌーンKCDX
途中まではかなり面白くかぶりつきで読んでいたのだが、突然出てきた主人公の過去話がかなり特殊な話であり、しかも夫の失踪という物語の根幹との関連性が薄いのでややちぐはぐに思えてしまいそこから少し冷静になって読んだ。
二つの話は確かに細い線でつながってはいるのだが、一つの物語としてもう少し絡みあっているか、もしくは主人公の過去について深く掘り下げられていればまた見え方が違ったのではないかと思う。
とはいえそういった物語の構造云々を凌駕するくらいに魅力に溢れた世界観を持つ漫画であった。
とくにキャラクターが抱え込んでいる感情を言葉にしないことで、むしろその人の内面を詳細に描き出そうとするような作者のスタンスには強く惹きつけられる。
世界の片隅で起こっているような彼らのひっそりとした静かな生活のその下で、様々な衝動がドラマチックに蠢いているのがひしひし感じ取れた。
すっかり作者の豊田徹也さんのファンになったので、別の単行本『珈琲時間』も読んでみるつもり。